ザキヤマという男の物語。

人生は冥土までの暇つぶし。自由気ままな男の物語を書き残しています。

Memorial②

僕らの来店をいつも歓迎してくれるBARは、カウンター9席、テーブル席(6人掛け)8席、さらにシュミレーションゴルフもプレイ可能。

フードメニューも豊富で、ドリンクも値段が明記されており、BAR初心者でも痛い目を見ない良心的なお店だからこそ、20歳代のお客さんも多い。

この辺りで50人収容可能なBARは珍しく、マスターの人柄も手伝って中々の繁盛店だ。

人見知りな彼女だが、マスターとはすぐに意気投合し、何度か団体客が入った時に裏方のバイトを頼まれる程の仲だ。

 

さてと、ザッキーと彼女ちゃんは何を飲む?

この人は水!私は生ビールで笑

えーーーー!大丈夫だって。コロナ頂戴♪

はいはい、一応お水もだしとくよ~。

 

コロナを飲み干し、ハイボールを注文したタイミングで仲良しの常連さんが来店(金融関係に勤める20代)。

お!ザッキーさんこんばんは!

おー!まいど~♪一緒にのもーぜー!!

あいたたた~・・・。出来上がってますやんか笑

そーなのよ。この人にお水飲ませてくれないかしら?爆

えー、、姉さんの彼氏さんでしょ~よ笑

 

話が弾めばお酒も進む。

時計は23:55だったのを覚えている。

ちょっとトイレ・・・。

ん?さっき行ったばかりじゃん?飲みすぎなのはYOUじゃ~ん笑

そうみたいね~笑

 

彼女が席を立ったのを見計らってだったのか、ソファー席から声が掛かった。

 

ザッキーさーん!僕らとも一緒に飲みましょうよ~!

おーーーー!構わんよー!あと数分で俺誕生日じゃーね笑

え~!そうなんですか!おめでとうございますー♪

ヘヘヘー♪だから今日は彼女ちゃんの奢りなんだよねー。幸せー♪

ははは♪イチャイチャアピールですかー?

 

フ・・・と店内が暗闇に変わった。 停電か?と思った瞬間、カウンターの裏からろうそくの灯りに照らされた彼女の笑顔が目に入った。 手に持っているのはケーキだとすぐに分かった。

 

え・・・?マジかよ!おいおい、マジでこんなんやめろって~!聞いてねーぞコラー!泣くぞ?なぁ、まじで泣くぞ・・・(泣いちゃいました)

 

ハッピーバースデー トゥー ユー♪をほかのお客さんも含めみんなで合唱してくれ、僕の目の前には彼女の手作りのティラミスが置かれた。

チョコペンで文字まで入っていて、ハロウィンにちなんでグロテスクな指が2本乗っている。

 

はい、消して消して!

ちょっと待って、涙が止まらん笑

ウフフ♪チョロいの~爆笑

 

胸いっぱい息を吸い込み、吹き消そうとした瞬間、彼女がフッ!っと数本消して横槍を入れた。

 

ちょっとぉ~笑

アハハハハ♪誕生日、おめでとう!14時に解散してからバタバタ作ったのよ。簡単なティラミスでごめんね。というか、アナタが来る前から私がここに居た時点でサプライズがあるって気付かなかったの?

全然・・・。

だめねぇ笑

はい!ザッキーこれはお店から、そしてもう1本は(常連の)彼らから。

え?え?まさかお前らもグルなんか!

そーゆーことです笑 彼女さんがトイレに行くふりしてカウンターに逃げ込む時間を僕らがザッキーさん呼んで作ったってわけです。

くーーーーーーーーッ!粋な事するねぇ!高いシャンパンありがとう。気を遣わせてごめんなー。

えーっスよ!さぁ、1本はチャッチャっと飲んでください。あとはみんなで飲みましょう!

 

あえなく撃沈し、壮絶な2日酔いに見舞われたのは言うまでもないが、その夜は彼女の肌の温もりを感じながら眠りについた。

僕は契約破棄した側。

それなのに、彼女は僕の記念日を盛大に祝ってくれた。

今まで、女性から手作りケーキを貰ったことがなく、いろんな意味で忘れられない記念日となった。